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【フィジカルAI最前線】NVIDIA「GTC 2025」で発表されたヒューマノイドロボット開発とデジタルツインの未来、開発基盤を総まとめ

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NVIDIAは、2025年3月に米シリコンバレーで開催された「GTC 2025」で発表された、主要な最新ニュースとポイントを日本語で解説する「GTC 2025 フォローアップ ウェビナー」を、2025年4月18日にオンラインで開催しました。

ロボットや自動運転の開発を加速するプラットフォーム「NVIDIA Omniverse Blueprint」と「NVIDIA Cosmos 」「NVIDIA Isaac GR00T」で協働作業を学習するヒューマノイド

「GTC 2025 フォローアップ ウェビナー」では、最新のBlackwellアーキテクチュアとリーズニングAI、ロボティクス(フィジカルAI)、生成AIや大規模言語モデル、デジタルツイン、自動運転などのAI最新情報を、各分野の専門家が解説しました。

ヒョンデの自動車工場で、作業動作のトレーニングを行うボストン・ダイナミクスのヒューマノイド(デジタルツイン)

その中から、ロボティクス(フィジカルAI)とそれに関連した最新情報を網羅した「フィジカル AI と Omniverse が変えるデジタルツインの新展開」について、この記事では詳細にレポートしていきましょう。なお、当日のウェビナーに参加できなかった読者は、アーカイブ配信がおこなわれているので、この記事と併せてご利用ください。

「フィジカル AI と Omniverse が変えるデジタルツインの新展開」について詳しく解説したエヌビディア合同会社の田中秀明氏

「フィジカルAI」は、ロボットや自動運転車などの自律マシンに搭載されるAI、現実の (物理的な) 世界を認識、理解して、複雑な行動ができるAIのことです。また、洞察や実行すべきアクションを生成する能力もあることから、「生成フィジカルAI」とも呼ばれます。
「GTC 2025」で発表された、「フィジカルAI(ロボティクス)」や「自動運転」等に関連する重要なトピックスとして、「Omniverse Blueprint」「Cosmos WFM(世界基盤モデル)」「Isaac GR00T」があげられます。

また、これらの技術を活用して、ジャガー・ランドローバー、メルセデス・ベンツ、コカ・コーラ、理経、Musashi AI、オムロンなどが「GTC 2025」で、実際の取り組みを紹介しました。また、田中氏からは更にBlackwell世代の「NVIDIA RTX PRO」新製品についての紹介もおこなわれました。
まずは「Omniverse Blueprintとは何か」から解説しましょう。

Omniverse Blueprintの拡充

フィジカルAI分野における「GTC 2025」の最初のトピックは「Omniverse Blueprint」(オムニバース ブループリント)の拡充です。「Omniverse Blueprint」は2024年秋にNVIDIAが公表した最新技術のひとつです。
「NVIDIA Omniverse」は、現実のデータをもとに、仮想空間上にほぼ同じ環境を構築することができるプラットフォームです。現実の環境を仮想空間上に構築したものを「デジタルツイン」と呼びます。

仮想空間上に現実とほぼ同じ工場を構築し、そこで稼働する自動搬送ロボットや作業ロボットを動かしてシミュレーションしたり、AIの基本動作をトレーニングしたりします。また、スタッフの配置などを含めて工場内の最適化をはかることもできます。3Dコンテンツを使って構築するため、とてもリアルに表現されています。

「Blueprint」は Omniverseのデジタルツインと AI、シミュレーション技術を組み合わせたテンプレートで、デジタルツイン環境とその中で動作するロボットなどを簡単な操作で設定し、シミュレーションを運用することができます。例えば、工場内で自動搬送ロボットが移動するコースを設定する場合、プログラムコードを書くことなく、操作画面上でロボットのコースをクリックして線でつないでいくだけで、ロボットの動きや物理的な挙動、インタラクションを含めた設定を行うことができます。

Blueprintを使えば、エンジニアでなくてもシミュレートできます。クリエイターやデザイナー、作業スタッフが直感的にデジタルツイン環境を作って設定できることが大きな特徴です。

「GTC 2025」では、「Omniverse Blueprint」の拡充機能として、データセンターのデジタルツイン構築向けの「Omniverse Blueprint for AI Factory」と、大規模な工場でロボットのシミュレーションを行うための「Mega Omniverse Blueprint」などが発表されました。

【GTC 2025で発表された主なOmniverse Blueprintの拡充機能】
・AIファクトリー(データセンター)の設計と運用向けの「Omniverse Blueprint for AI Factory」
・大規模AIファクトリー統合(VFI)向けの「Mega Omniverse Blueprint」
・リアルタイムデジタルツイン(OV-RTDT)向けBlueprint
・気象分析向け「Omniverse Blueprint for Earth-2 Weather Analytics」

■NVIDIA Omniverse Blueprintでリアルタイムのコンピューター支援エンジニアリング デジタルツインを作成

Omniverse Blueprint for AI Factory

AI開発のためのデータセンター「AIファクトリー」は年々大規模になっていて、スムーズに軌道に乗せるためには、大量の機材や電源、ネットワーク設備などを事前にシミュレーションして最適化することが重要です。そこに「Omniverse Blueprint for AI Factory」が活用され、CadenceのRealty Digital Twin プラットフォーム、ETAPやSchneider Electricなどの電力管理シミレーション・スイート、Vertivのインフラ管理シミュレーションツール等とも連携できるようになっています。

ネットワークシミュレーションとテスト環境を仮想的に提供する クラウドベースのネットワーク検証・開発プラットフォーム「NVIDIA Air」とも連携できます。Omniverseはこれらのツールやソリューション群とコラボレーションが可能になっています。

データ センターをソフトウェアでモデル化し、デジタル ツインを作成することができる「NVIDIA Air」

アップデートの際は、Omniverse Blueprint for AI Factoryのコラボレーション機能を使用すれば、ほぼ全自動の横繋がりで更新を行うことができる、としています。
■デジタル ツインでギガワット規模のAI工場を構築

「GTC 2025」では、Ansys、Cadence、Hexagon、日本からはオムロンなどが、それぞれ企業の産業システムと「Omniverse Blueprint」を統合したシステムの発表や展示を行いました。

大規模ファクトリー統合(VFI)向けの「Mega Omniverse Blueprint」

数十台のロボット群(フリート)を導入する大規模工場でのデジタルツイン環境(バーチャルファクトリーインテグレーション:VFI)の構築と、フリートをトレーニングできるプラットフォームです。

これは既にアーリーアクセスとして「NVIDIA APIカタログ」(多様なモデルをAPI経由で試すことができるサービス)で試用版が提供されています。多数の自動搬送ロボット(AMR)が行き交う自動走行ルートをクリックして自動生成する機能などを試してみることができます。なお、仮想空間上でAMRが走行中に取得するであろうカメラ映像やLiDARのデータもAIによって自動生成されます。



■ロボット フリート シミュレーションのための産業用デジタル ツイン

「Omniverse」と「Cosmos」を連携したメジャーリリース

「Cosmos」は2025年1月のCESで発表された、都市全体など大規模なデジタルツインを構築し、センサーや衛星データ、LiDARデータなどのデータを反映させて、生成AIで交通や人の流れ、災害シミュレーション等を含めたフィジカルAI環境をリアルタイムに構築できるプラットフォームです。「Cosmos」発表から数ヶ月が経過して、いよいよ実践的に活用しやすい機能や最新情報が発表されました。

具体的には、構造解析、熱流体解析、電磁界解析など、様々な物理現象をシミュレーションできるソフトウェア「Ansys」や「Cadence」がOmniverse フィジカルAIを産業アプリに統合し、エコシステムとして拡張していくことなどがあげられます。
下の動画の中では、米シリコンバレーのNVIDIA本社が宇宙船となって飛んでいく、印象的なシーンが登場します。田中氏は「Omniverse Foundational Technology Montage」(通称テックモンタージュ)は最新のOmniverseを紹介する動画でGTC 2025 に合わせてアップデートされたと紹介しました。

■NVIDIA Omniverse Foundational Technology Montage I GTC Spring 2025 Edition

ヒューマノイド向けの基盤モデル「Isaac GR00T」

NVIDIAはヒューマノイド等のフィジカルAIに活用できる「Cosmos世界基盤モデル」(WFM)の第一弾を3月開催の「GTC 2025」に発表しました。
世界中でヒューマノイドの開発が急速に進歩している中、多くのロボット開発者が待ち望んでいるのが世界規模の「基盤モデル(Foundation Model)」です。ヒューマノイドには汎用性が求められ、機構や制御も複雑です。その開発の時間とコストを大きく削減できるのが、汎用的な基本動作を学習・習得済みの「基盤モデル」です。

ボストン・ダイナミクスがロボットをフリートによってトレーニングしている様子

そしてヒューマノイドロボット開発向けの世界基盤モデルが「Isaac GR00T」(アイザック・ジェネラリストロボット00テクノロジー/通称グルート)です。その第一弾となるBlueprint「NVIDIA Isaac GR00T N1」が公開され、「NVIDIA APIカタログ」で体験可能になっていることを、田中氏は紹介しました。

左がデジタルツイン「Omniverse」でトレーニング中のヒューマノイド。右はAIモデルをデプロイしたフィジカルAIを搭載したリアルな作業用ヒューマノイド

自動運転に「Omniverse」と「Cosmos」を活用

NVIDIAは、「Omniverse」と「Cosmos」を活用したフィジカルAI向けシミュレーションは、ヒューマノイドだけでなく「自動運転車(Autonomous Vehicle)」への展開も積極的に提案しています。

自動運転用のAIには膨大な学習データが必要です。中でも他の車両が行き交い、人や自転車が通行し、信号や標識、路上駐車などが多い市街地の走行においては、朝・昼・夜、晴天や雨天、霧や雪など、多くの環境の変化が起こります。それらすべての実走行データを収集することは困難です。そこで、環境を変えた生成映像を設定変更だけで切り換えることができるシミュレーションがとても重要になります。

また、シミュレーション上であれば、他の車両や自転車、歩行者との接触事故を仮想空間で再現してAIに学習させることもできます。

■NVIDIA OmniverseとCosmosでAV開発を加速

ロボティクスに「Omniverse」と「Cosmos」「Isaac GR00T」を活用

産業用ロボットにも「Omniverse」と「Cosmos」、「Isaac GR00T」を組み合わせて効率的なトレーニングを行うことができます。

デジタルツインでフィジカルAIを効率的にトレーニングする一例

自社の工場やオフィス、リビング等を忠実にデジタルツインで構築し、多くの設定や取り扱う部品の生成データを切り換えてロボットの作業を学習させることで、効率的にトレーニングすることができます。田中氏はそのプロセスの一例を紹介しました。

人間が「Apple Vision Pro」(VRゴーグル)を装着して、実作業の動作を約10回行う。

そのデータから約100回分の合成モーションデータを生成してロボットが学習。

OmniverseとCosmosによるデジタルツインで物理的な特性を追加。約100万回の生成データとしてフィジカルAIに学習させる。

実トレーニングでおこなった場合、膨大な時間とコストがかかる学習作業が、「Blueprint」と「Isaac GR00T」ではデジタルツイン内で簡潔かつ効率的に行うことができるようになり、今後、自動運転やロボティクスの開発や実用化が急速に加速していくことが期待できます。

デジタルツインでトレーニング中のヒューマノイドの例(Foxconn)

■ロボットがロボットとして学ぶ方法:トレーニング、シミュレーション、および実世界での展開


「Omniverse Blueprint」や「Isaac GR00T」のリリース状況

「Omniverse」は前述のように、開発者の作業環境に合わせてデジタルツイン環境を構築できる3Dワークフローのプラットフォームです。提供を開始した段階から、Omniverseの開発者向けキット(Kit SDK)を提供してきました。その後、Omniverseをクラウド環境で使いたいという声に応えて「Omniverse API」の提供が開始されました。
そして、今回の「Omniverse Blueprint」は、3DデータやAI、シュミレーション環境を組み合わて構築するリファレンス・アーキテクチャになります。

「Mega Omniverse Blueprint」はアーリーアクセスを開始、「Omniverse Blueprint for AI Factory」は近日公開となっています。ヒューマノイド開発向け「Isaac GR00T」は合成モーションの生成(N1)の提供が始まっています。


「GTC 2025」Omniverse オススメ事例セッション

「GTC 2025」では、Omniverseに関するセッションが150を超えました。その中でも特に先進的な取り組みとして、田中氏は6つのセッションを紹介しました。これらはオンデマンドで視聴できます(バーチャル参加登録(無料)が必要です)。

Jaguar Land Rover

自動車メーカーのジャガー・ランドローバーのデジタルツイン活用事例

Accelerating Insights and Efficiencies in Automotive Manufacturing using Immersive Digital Twins(S73011)
https://www.nvidia.com/ja-jp/on-demand/session/gtc25-s73011/

Mercedes-Benz

メルセデス・ベンツのデジタル工場活用事例

Using Digital Factories to Advance Physical AI(S73848)
https://www.nvidia.com/ja-jp/on-demand/session/gtc25-s73848/

Coca-Cola

生成AIを活用したコカ・コーラのCM事例

Refreshing Manufacturing Operations at Coca-Cola Consolidated With Digital TwinsS73008
https://www.nvidia.com/ja-jp/on-demand/session/gtc25-s73008/

Coca-Cola / Sight Machine

コカ・コーラのCMを作成したSight Machineの事例

Scaling Coca-Cola’s Content Creation with OpenUSD and NVIDIA Omniverse(S73123)
https://www.nvidia.com/ja-jp/on-demand/session/gtc25-s73123/

Japan AI DAYから2セッション

今回のGTCでは、日本語でセッションを行う「Japan AI DAY」が開催されました。その中から、田中氏は理経とMusashi AIのセッションを紹介しました。理経は、Omniverseで工場プランニングを、Isaacでロボットのプランニングを行う事例を紹介。Musashi AIは、OmniverseとOpenUSDで実現するバーチャルファクトリー事例を紹介していて必見の内容となっています。
理経 (Japan AI DAY :日本語)
OmniverseとOpenUSDで実現する次世代バーチャルファクトリーの創り方(S73886)

https://www.nvidia.com/ja-jp/on-demand/session/gtc25-s73886/
Musashi AI (Japan AI DAY :日本語)
これからの工場プランニングとIsaac Perceptor搭載のAMR例(S73883)

https://www.nvidia.com/ja-jp/on-demand/session/gtc25-s73883/

オムロンはバーチャルヒューマンを展示デモ

オムロンは、GTCの展示会場の同社ブースでCT型X線を使った半導体検査装置をデモ展示。そこではバーチャルヒューマンを活用した次世代AIエージェントシステムが公開されていました。オムロンの産業用統合開発システム「Sysmac Studio」と「Omniverse Blueprint」を統合・連携した最新の事例となっています。

「RTX PRO Blackwell」のラインアップを全12モデルに拡充

田中氏はセミナーの最後に「NVIDIA RTX PRO Blackwell」(NVIDIA RTXからブランドを改名)についての紹介がありました。「RTX PRO Blackwell」は最新のBlackwellアーキテクチュアを搭載したグラフィックスカードです。ワークステーションやデータセンター等サーバ向け製品のほか、今回「GTC 2025」の発表でラップトップ、デスクトップ、モバイルワークステーション向けにラインアップが拡充され、全12モデルが用意されることになりました。

講演では、AIの開発と利用を前提として登場したデスクトップやワークステーション向け「RTX PRO Blackwell」の特徴に触れました。AIの推論処理をシェーダに組み込むことができる「ニューラルシェーダー」、AIで高品質な映像生成・フレーム生成などが利用できる「DLSS4」、メモリ使用量を抑えながらGPUのパフォーマンスを向上させる「FP4」、AI TOPS値が4000など、最新技術に触れました。メモリは最大で96GBが搭載できます。また、ディスプレイポートは8K出力が可能な「2.1b」に対応しています。

NVIDIA「Ampere」「Ada」「Blackwell」の3世代の仕様比較も公開しました。

レイトレーシングのベンチマークで、「Turing」世代と比較して約8倍、「Ampere」世代とは約4倍の性能アップが確認されています。

このウェビナーではロボティクス以外のトピックでも、GTC 2025 の主要な発表内容について、 NVIDIA 日本法人の専門家より改めて詳細に解説されました。NVIDIA が創り出す AI エコシステムの未来とそれを支える技術に関して興味があり、当日ウェビナーに参加できなかった読者には「アーカイブ配信」がおこなわれているのでご確認ください。

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